花にねがいを〜もう一つのサンタクロース誕生物語〜

【上演にあたって】

2016年、日本では『世界一貧しい大統領』と言われた、元ウルグアイ共和国大統領のホセ・ ムヒカ氏が来日し、講演、TV、書籍を通じて多くの人に、あらためて『人生とは?』『幸せとは?』という課題が投げかけられました。あらゆるところで競争は激化し、そしてその格差は、次代を担うべき、明るい未来をつくる子どもたちの世界へも影響を及ぼしています。

大人子ども関係なく家庭環境や貧富の差によるいじめ、震災避難者に対する謂れなき差別は、より深刻さを増しています。子どもたちの世界は、大人の社会の縮図です。知らず知らずのうちに大人の価値観、考え方が子どもたちに影響し、子どもたちも大人と同じ問題、悩み、苦労を抱えています。

他者を理解し、受け入れる勇気、人を思いやり、寄り添う優しさこそが誰もが幸せな世界を作る第一歩となる筈です。国籍や人種、年齢や世代、様々な価値観、考え方を超えて私たちが忘れてはいけない心の在り様を、子どもたちに馴染みのある、サンタクロースのお話を題材にしたオリジナルストーリーを通して、先生と生徒、親と子でご覧いただき、今一度自分を見つめ直すきっかけになることを願い、本作品を上演します。

 

サンタクロースのモデルは、3〜4世紀の小アジア(現在のトルコ)の司教であった、聖ニコラウスだと言われています。裕福な家庭に生まれたニコラウスですが、幼少期に伝染病で両親をなくした少年は、遺産を貧しい人たちに分け与え、キリスト教会の主教であった叔父に薦められ修道院に入り聖職者となります。

困っている人や貧しい人、不幸な人々を助けるために様々な奇跡を起こし庶民の味方と言われた聖ニコラウスには様々な伝説が残されています。

あるとき、近所に3人の娘のいる家族が住んでいました。たいへん貧しく、娘を売らなければならないほど、お金に困っていました。そのことを知ったニコラウスは、その夜、その家の煙突から金貨を投げ入れました。ちょうどその金貨は、暖炉のそばに干してあった靴下の中に入って、そのお金で娘は救われ、後に結婚することができたのです。聖ニコラウスは、同じことを下の2人の娘のときも繰り返し、その家庭を救ったと言われています。

クリスマスに靴下を下げておくと、サンタクロースが煙突から入って贈り物を入れてくれるという習慣は、ここから生まれたようです。ニコラウスにまつわる伝説や奇跡は、この他にたくさん残っています。船乗りを嵐から救ったり、殺された子どもを生き返らせたという話も伝えられています。彼は、つねに子どもたちや貧しい人、弱い立場にある人と共に生きていたので、『子どもの守護の聖人』とされています。

【構成】計75分 第一幕25分、休憩10分、観客との交流15分、第二幕25分程度の三部構成

【人頭】出演者4名、SD1名(ホール公演の場合、音響1名、照明1名、舞監1名追加可能性あり)

【あらすじ】

 

◇第一幕

 

山に山菜を取りにきたサンは、熊と遭遇し必死に逃げるうち、迷子になってしまった。


3日間飲まず食わずで森の中を彷徨い、空腹で気を失いそうになったその時、魚を咥えたトナカイ(トゥナ)に遭遇した。

サンは、トナカイから魚を奪い取ろうとする。

そこにもう1頭のお腹をすかせたトナカイ(カイ)が現れ、1人と2頭で一つの魚を奪い合う争いが始まった。

 

それは、奪い合い、相手を攻撃する、弱肉強食の世界だった。

果てしなく続く争い・・・。

 

やがてサンは、一つの魚をみんなで分け合うことに気づく。分け合い、相手を思いやる事に気づいた1人と2頭は、やがて意思疎通ができるようになり家族のようになっていった。


仲良くなればなるほど思い出されるのは、亡くなったパパとママのこと・・・。


ある日、トゥナとカイは、あまりに寂しそうなサンの姿を見て、森で語り継がれている『どんな願いも叶えてくれる杖を持つウサギさん』の話をする。パパとママに会いたい、その願いを叶える為、サンは走り出した。そして・・・。

※ちょっとしたアクションシーン(トゥナとサンの戦い)もあり、ドタバタっと元気なシーン多数!


◇観客との交流

 

「もしも、願いがひとつ叶うとしたら欲しいものは何ですか?」

事前アンケートを元に、今の子どもたちの「お願い」、先生たち(今の大人)のお願いを見ながら、モノや形ないモノとの違いをみんなで考える。

やがて、そのまま第二幕に入っていく・・・

※サンタの袋に子どもたちや先生たちの「お願い」を入れておき、それを開封していく

◇第二幕

 

世の中の子どもを笑顔にしたい、そんな想いからサンは、トゥナとカイとともに貧しい家々を回り、子どもにお菓子やおもちゃをプレゼントしていた。しかし、町の人たちはそんなサンたちを泥棒と間違えたり、変わり者扱いして、受け入れてはくれなかった。

「これで最後にしよう。」そう決めて入ったその家には、目の不自由なジョアンヌ(老婆)が暮らしていた。


ここにはジョアンヌの息子のマイケルという少年(青年)がいるらしい。

そっと家の中に入り、子どもを探そうとしたその時、

 

「マイケル、おかえり。」

 

ジョアンヌはサンを息子のマイケルと勘違いし優しく出迎える。


温かいスープとおいしいパンを食べさせてやり、手編みの帽子まで用意していた。

久しぶりの母の温かさに触れ、サンはついついマイケルになりきって過ごしてしまう。

 

本物のマイケルがいつ帰ってくるかも分からない。

心配したトゥナは、家の奥へと入っていった。

 

トゥナが戻って来た時に手にしていたものは、マイケルの遺影だった。

 

ジョアンヌの寂しさを想ったサンは・・・。

※ヒューマンファンタジードラマとしての第二幕となります

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花咲かプロジェクト

 

『花にねがいを』

 

【脚本・演出】 山縣有斗

 

【出演】 齋藤一 さとうあつこ 手塚葉揺 山縣有斗

 

【衣裳・小道具・演出助手・ロゴデザイン】 にしむらうめ

 

【アクション監修】 難波一宏

 

【スティール】 深江豊

  

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